大使レター(平成25年10月・和訳)

こんにちは! サワディー・クラップ!

今日のデジタル時代に、あえてアナログで皆様にリーチしようというこの試みも、私がタイに来て二度目になります。デジタルでは、件名をご覧になっただけで、敢えなく「削除」ということになるかもしれませんが、アナログであれば、封さえ開けていただければ、数行は読んでいただけるのではと期待しています。

タイ・バレーボール優勝

日タイの関係は、相変わらず非常に緊密で、この数ヶ月の間にも、数え切れないほどの多くの重要な交流が行われてきています。日本の大使としては、まずは、政府間のハイレベルの交流・往来に言及すべきなのでしょうが、それもあまりにも多いので、ここでは、勝手ながら、スポーツ・ファンの私が個人的に最も印象に残ったことを取り上げたいと思います。

それは、9月に、ナコンラチャシマで開催されたバレーボール・アジア選手権において、タイのチームが日本を破って優勝したことです。日本チームは、ロンドン・オリンピックで銅メダル、世界ランキングでも遙かに上位ということで、正直なところ日本チームが負けるとは思っていませんでした。それだけ、タイのチームが精進を重ね、力をつけてきたということだと思います。そして、私は残念ながら見に行けなかったのですが、タイのチームのチームワーク、観客の皆さんとの一体となっての力が、この結果をもたらしたのだと思います。ビジネスでも政治でも、力を合わせることが大きな前進につながりますよね。来月、今度は東京で国際大会がまたあるようですが、タイ・日本対決がこれから益々楽しみです。

2020年オリンピックの東京開催

タイのバレーボール・チームが、そしてバドミントンのラチャノック選手が、いずれも目指している最高の舞台がオリンピックだと思います。先月、東京が、2020年のオリンピック・パラリンピックの開催都市に決定しました。決定の当日、日本では、多くの人が真夜中のTV中継を見ながら歓喜の声を上げました。そして、その決定後、私も、多くのタイの方々から祝福のメッセージを頂きました。ありがとうございます。日本国内では、7年後に素晴らしい大会が開催されるよう、早速体制作りが始まっています。2020年の夏、開会は7月24日です、今から皆様の予定に入れておいてください。

日本経済

前回の東京でのオリンピック開催は1964年、日本が本格的な高度成長期に入ろうというところでした。オリンピックに合わせ、東京・大阪間の新幹線が開業しました。新幹線はその後、日本全国にネットワークを広げ、開業以来49年、乗客の死亡事故は一件たりとも発生しておらず、最も安全で信頼できる交通システムとしての評価を確立し、日本経済の発展の中で大きな役割を果たしてきました。ちなみに、羽田空港へのモノレールが初めて開業したのも1964年です。もちろん、現在のタイの経済水準は、一人当たりGNPで見ても当時の日本よりはるかに高いのですが、私が子供心に覚えている東京の当時の活気あふれる情景は、現在のタイの活気に通じるものがあるように感じます。

その後、日本は、大きな経済成長を達成した後、いわゆるバブルが崩壊し、長期にわたり経済停滞に苦しむことになりましたが、現在、安倍政権の下で、いわゆるアベノミクスと呼ばれる政策に従い、経済再生、活性化の努力が進められ、その成果が現れつつあります。オリンピック開催決定も、これを後押しするものと言われています。そうした経済状況を背景に、この10月1日には、安倍総理は、来年春からの消費税引き上げの実施を発表しました。経済成長と財政再建の両立は可能であるとして、そのことを強力に進めていくことを明確に打ち出したのです。

ウィメノミクス

前段で、アベノミクスについて触れましたが、「ウィメノミクス」という言葉はご存じでしょうか? これは、女性の社会進出を促せば促すだけ経済の成長率は高くなるという知見です。現在、安倍政権は、アベノミクスと共に「ウィメノミクス」を踏まえた「女性が輝く社会を作る」ことを重点政策として取り組んでいます。そして、それを、国内の仕組みを変える取り組みのみならず、国際社会においてもその方向で貢献することを外交面での重要な柱として打ち出しています。安倍総理は、国連総会での演説でも、このことを重点テーマとして取り上げました。私の見たところ、タイではインラック首相をはじめ、各分野で女性が大変活発に活躍しているように思いますが、タイ政府は、女性の役割強化に向け、なお努力が必要と考えておられると伺いました。こうした分野でも、日本とタイの協力できる面があるかもしれません。

査証免除

滅多に人にほめられることのない私ですが、タイの方々からこの数ヶ月いつもほめられることがあります。

日本政府が7月1日からタイ国民への査証免除を開始した、これはよい政策であるというものです。このことにより、期間は15日に限られますが、観光でも、ビジネスの打ち合わせでも、思い立ったらすぐにでも日本に行けるようになりました。その効果もあり、タイの方々の訪日者数は、急増しており、大変嬉しく思っています。

ただ一点、このレターを受け取っている皆様には直接関係のないことですが、不法滞在者数が増えていることを少し心配しています。正当な手続きを経ず15日を超えてしまう場合(やむを得ないときは入国管理局に相談してください)や、滞在中に就労して報酬を得たりすると法律違反になってしまいます。我々としては、日タイ間の交流を更に促進し、もっともっと多くのタイの方々に日本に来てもらいたいと考えており、そのためにもこうした問題ができるだけ生じないように願っています。

そして「良いことをすれば良いことが来る」(注:タイで最も有名なことわざ「タムディー・ダイディー タムチュア・ダイチュア」)、今回の査証免除が、このことわざの通りになることを私は信じています。

日ASEAN40周年

今年は、日本とASEANが正式に交流を開始してから40周年に当たります。今や日本とASEANは、地域の平和と安定、発展と繁栄のために緊密なパートナーとなっており、特に経済面では、日本の主要な投資先になっています。タイはそのASEANの中でも最も重要な地位を占めています。12月には東京で日ASEAN特別首脳会議が開催され、インラック首相も訪日される予定です。

結び、洪水

タイに着任して未だ一年に満たない私にとっては、毎日が新しい経験であり、今、初めて雨季を経験していることになります。当然気にかかるのは、洪水の被害であり、日々のニュースで被害の模様が報じられ心を痛めています。そうした中で、日本政府が協力して行う洪水対策のプロジェクトがいくつか始まっています。先月には、バンコク東部外環状道路のかさ上げ工事の起工式が、運輸大臣も出席されて行われ、また、アユタヤの水門の設置工事も始まりました。こうしたプロジェクトは大きな事業ですのですぐに完成というわけにはいきませんが、今後の洪水被害を防止する上で役立つものと確信しています。

雨が降ると渋滞も増え、車の中で過ごす時間も増えたように思います。大水と苦闘しておられる方々のことを思いつつ、また、この雨がタイの大地に恵みをもたらすことを祈りつつ、筆を置きたいと思います。ここに書き綴ったことは、すべて私の勝手な雑感ですが、よろしければ、忌憚のないご意見やご批判を頂戴できれば幸甚です。


敬具


タイ王国駐箚 日本国特命全権大使
(サイン:タイ語)
佐藤 重和

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