開発協力
文化無償協力 (Cultural Grant Aid)
開発途上国の多くは、経済・社会の発展のみならず、文化・教育の振興も含めた国造りのために努力しています
政府開発援助(ODA)の一環である文化無償協力は、こうした各国の文化と教育の振興に貢献することを目的として、昭和50年に創設されました。これまで120を越える国々の関係者、そして、実際に文化や教育に携わる機関の方々から、数多くの感謝の声が寄せられています。
平成12年度には、こうした従来型の文化無償協力に加え、小規模のきめ細やかな協力を行う「草の根文化無償」や、文化遺産関連の大型案件にも対応可能な「文化遺産無償」が導入され、協力の幅が広がりました。この2つの新しい協力形態のうち、草の根文化無償は、地方公共団体、NGO等、開発途上国のいわゆる草の根レベルに直接援助を行うことを目指したものです。
また、文化遺産無償は、従来の文化無償協力では対応できなかった文化遺産の修復・保存・活用のための施設建設(当該文化遺産関連の出土品や文化財を展示したり保管したりする施設の建設など)や整備(文化遺産へのアクセス道路の整備など)を可能にするものです。
文化無償協力 | ||
---|---|---|
一般文化無償協力 | 文化遺産無償協力 | 草の根文化無償協力 |
|
|
|
対タイ一般文化無償 実績一覧表 |
平成17年11月1日の時点で、タイにける文化遺跡無償協力の申請および実績はまだありません。 | 対タイ草の根文化無償 実績一覧表 |
申請用紙 ![]() ![]() |
1. 一般文化無償協力 (Cultural Grant Aid)
一般文化無償協力は、各種の文化・教育活動に使用される機材の購入資金及び機材の輸送・据え付けのために必要な資金を一件5,000万円を限度として贈与するという制度です。昭和50年度の制度創設以来、平成13年度までに我が国が実施した文化無償協力は、126カ国・地域に対し合計1,124件、金額にして461億9,830万円にのぼります。文化無償協力によって開発途上国に贈られた機材は、文化財や文化遺産の保存、劇場や美術館などでの事業実施、教育・研究の振興等、様々な場面で活躍しています。
【対象国】
一人当たりのGNPが5,225米ドル(世銀の融資基準グループIV※)以下の開発途上国が対象となります。
※国民1人当たりのGNPに応じて世界銀行は融資基準を設けており、775米ドル以下のグループIから2,996~5,225米ドルのグループIVまであり、グループVである5,225米ドル以上の国は世銀の融資を受けられません。文化無償協力は、このグループIからIVまでの国を対象としています。
タイに対しては、平成13年度までで、タイ政府が実施してきた41件のプロジェクトに対し総額17億4,260万円の資金協力を行ってきています。
【対象】
相手国政府に資金を贈与するかたちで実施されるので、対象は国家機関になります。
【申請方法】
相手国の窓口機関(外務省や文化省など)が当該国の案件を取りまとめて日本大使館に提出することとなっています。
2. 文化遺産無償協力 (Cultural Aid for Cultural Heritage)
これまでも文化無償協力では、アンコールワットなどの世界的な文化遺産の修復に必要な機材の供与などを通じて文化遺産の保全に協力をして来ました。しかし、各国からの要請には、文化無償協力の既存の枠には収まらない大掛かりな機材を必要とするものや、機材供与だけでは有効な文化遺産の保全が困難な場合があります。
こうした中、世界各地の文化遺産は、当該国のみならず「人類共通の財産」であるとの認識が強まっており、わが国においても、文化遺産に対する関心は高まる傾向にあります。また、1999年には、松浦ユネスコ事務局長が誕生したことにより、文化遺産保全の分野におけるわが国の国際協力に対する期待も大きく膨らんでいます。
このような国内の関心の高まりや国際社会の期待に応えるため、平成12年度より「文化遺産無償」を導入しました。導入されて以来、平成13年度までに4ヶ国に対し、8億5,580万円の援助を実施してきました。
【対象分野】
文化遺産無償が対象とする事業には以下のようなものがあります。
- 文化遺産の保存・修復のための資材供与
- 文化遺産保存関連施設の建設(ミニ博物館、出土品保管庫等)
- 文化遺産周辺整備(アクセス道路、防御柵等)
【対象国】
原則として一人当たりのGNPが5,225米ドル以下の開発途上国が対象となります。
【申請方法】
相手国の窓口機関(外務省や文化省など)が当該国の案件を取りまとめて日本大使館に提出することとなっています。
【案件例】
平成12年度文化遺産無償案件として、チュニジアのカルタゴおよびローマ遺跡に対する調査・発掘機材の供与、そして、ホンジュラスのコパン遺跡などマヤ文明遺跡を中心とした考古学活動に対する機材の供与を決定しました。
3. 草の根文化無償協力 (Grant Assistance for Cultural Grassroots Projects)
これまでの文化無償協力は、対象機関が国家機関であったため、NGOなどの非政府団体に対する協力は出来ませんでした。交換公文の締結などの作業が必要となるため要請から実施までに長い時間がかかってしまうという制約もありました。このため、従来の文化無償では、小規模なニーズに対して迅速かつ的確に援助を実施することに必ずしも十分に対応できたとは言えませんでした。
そこで、平成12年度より新たに「草の根文化無償」を導入しました。草の根文化無償は、協力の対象機関を広げ、NGOや地方公共団体に対する支援を通じて開発途上国のいわゆる草の根レベルに直接裨益するようなきめ細かい協力を行うもので、平成13年度までに32ヶ国に対し、合計37件、約1億7,816万円にのぼる援助を実施してきました。
【対象分野】
機材供与という点ではこれまでの文化無償協力と同様ですが、草の根文化無償では現在使用されている楽器などを開発途上国で有効に使ってもらうための輸送費補助も新たに対象に含まれます。
【対象国】
一人当たりのGNPが5,225米ドル以下の開発途上国が対象となります。
【対象】
対象機関は、NGOや地方公共団体が中心となります。
【申請方法】
NGOや地方公共団体などが直接、日本大使館(担当:在タイ日本国大使館広報文化部 電話:02-207-8504 / 02-696-3004)に申請します。
【案件例】
平成12年度草の根文化無償の主な案件として、カンボジアで活躍する上智大学アンコール遺跡国際調査団への遺跡修復機材の供与、ブルガリアのソフィア市中央人形劇場への音響機材の供与、そして、パラグァイの天文学愛好者協会への移動プラネタリウムの供与などがあります。